2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

3-6

自分から言いだしたのだから、これはデートだ。今更ながら、スルガはその事実を思い出し、冷や汗をかく。 ツイードの思考パターンが初めて読めたという感動に浮かれて、選択を誤ってしまったとしか思えない。 スルガは、ツイードの手を引いて、噴水広場のほ…

3-5

仲間には、スルガから適当な理由を言っておいた。 自分たちが一緒に店を出るのだと知った仲間たちは、どことなく納得したような顔で、素直に飲み明かし会のリタイアを許してくれた。あの虚をつかれてポカンとした顔は一体なんだったのだろう。スルガには、少…

3-4

「ライのばかぁああああ!!」 囲んだ円卓に、スミが突っ伏しながら、彼女の恋人を罵倒する。その声は遠くから聞いても彼女がまともに立って歩けないだろうことが分かるぐらい、呂律がまわっていない。 周りの人間は苦笑しながら彼女を励ます。ときにからか…

3-3

ミョルニール山脈の北奥地にある鉱山の炭鉱。かつてはミョルニール炭鉱として多くの鉱物や石炭が排出されたが封鎖されてもう長い。そこにモンスターが住み着きダンジョンのような巣窟と化してからは、その廃鉱は冒険者のかっこうの狩場となっていた。 スルガ…

3-2

「あ、ツードさんだ」 一旦、溜まり場にて、狩りの行き先会議をしていたところに、遅れて彼が来た。 ツイードを発見したスミの声で、スルガは数人と囲っていた地図から即座に顔をあげて、表通りの方に視線をやる。相変わらず生活臭のしない歩き方で、ツイー…

3-1

『ハ…っ』 吐息が聞こえた。 それはとても甘い声だった。 滑らかな肌は、触れるだけで吸い付くようにスルガの手に馴染む。 ツイードは、潤ませた瞳を揺らせ、スルガの名を呼んだ。 『……ス、ルガさ……はやく』 腕が引き伸ばされて、スルガはその手に誘われるよ…